弁護士に必要な能力としての「教養」力

これまで,対応が難しい案件にぶつかる度に,自分の力不足を思い知らされてきました。

知識と経験を総動員して何とか解決に向けた方向性を見いだせることもあれば,残念ながら見いだせないこともあります。
そんなときには,無力感と共に,弁護士にとって必要な「スキル」とは何だろうか,とよく考えます。

 

弁護士を目指して勉強していた学生の頃は,弁護士に必要なのは,六法の知識と六法を理解して活用する能力だと思っていました(法知識・法解釈力)。

 

その後,司法修習生になって裁判所・検察庁・弁護士会などで研修をする中で,法律実務家には,知識や法解釈力があるだけでは不十分であって,それらの力を前提に,事案解決のために,適切な法的手続を選択し,その手続を安定的に遂行していく能力(手続遂行力)が必要であることを知りました。

また,法的手続も解決のための方法論の氷山の一角でしかなく,問題解決のためには事案の背景の掘り下げを含めた深い洞察力と多様なアプローチの発想力(問題解決力)が必要であることも痛感しました。

 

さらに,弁護士として実際に執務していくようになり,依頼者・相手方・利害関係人・他の専門家などと広くかかわる中で,共通の視点に立脚できる文脈を探しながら,目的達成に向けて共通認識を形成していく能力(コミュニケーション力)が必要であることを再認識しました。

 

そして,開業からの5年を振り返って思うのは,これらの実務的スキルを縦軸とすれば,すべての実務的スキルを横断的に貫く横軸として,経験や実務スキルのみにとどまらない人間としての幅広い知見(教養力)が弁護士には必要なのではないか,ということです。
法律実務スキルが弁護士による事件解決のコアスキルとなることは間違いないと思います(実務スキルのない弁護士が事件解決できるはずがありません)。
しかし,実務スキルのみで事件に向かえば,究極的には事務的・効率的な対応に終始して,功利的な結果を迅速にもたらすことこそが最善なものとなってしまいます。
無論,それを否定するものではないのですが,私の目指す弁護士事務所像は,もう少し人間味のある「質」を提供するものです。そのためには,弁護士(さらにいえば事務局も含みます)が法律にとどまらない幅広く深い知見を持ち,その知見が事件対応のバックボーンにならなければならないと思うのです。
その意味で,実務スキルと教養は,弁護士業務の両輪と言え,その双方の内容とバランスが個々の弁護士・事務所の個性をもたらすのだと思います。

 

このような考察を踏まえ,当事務所では,今年より,「事務所文庫」と言う取り組みを始めてみました。
これは,弁護士・事務局が毎月1冊ずつ,順番に各人の関心に基づいて書籍を購入し,それをみんなで読む,という仕組みです。
開始から半年が経過しましたが,各担当者の本のチョイスが個性的なため,各員の視野と知見を広げると同時に,事務所内でのコミュニケーションも活発・円滑になっていると感じています。

 

また,私個人も,最近改めて,学生の頃に受講した先生の近著や,法律に限られない幅広い本を読んでいくよう心がけています。
こちらについては,自分の思考の整理も兼ねて今後このブログでもご紹介してみたいと思っています。



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