アトラスの明日はどっちだ 2 〜インデックス民事再生「2手目」を読む

以前少しふれたインデックス社の民事再生に進展がありました。
同社発表によれば,スポンサー1次選考が終わったので2次選考に進む,併せて金融機関から10億の融資枠設定を受けたとのことです。

そこで,この発表の意味合いについて,再び独断で想像・分析します
なお,本稿はまったく本件とかかわりのない過去の経験&一般論から出てきた「全くの想像」ですので,実際の状況とは異なっている可能性が多分にあります。その前提で読んでください。
民事再生に関心のない方は,パスしていただいて結構です。


想像1 いつスポンサーが決まるか(想定されるスケジュール)

この点を考える上では,「再生計画案の提出期限」が重要です。
同社の発表によれば,11月5日が東京地裁への再生計画案提出期限とされています。
この再生計画案というのは,どれくらいの規模の弁済をどんなスパンで行うのか,という債権者への提案のようなものです。
すなわち,これを作るためには,いくら弁済できるのか=弁済原資が定まらねばなりません。
本件では,弁済原資は事業譲渡代金,弁済は多分1回になると思われます。
とすれば,再生計画案提出締切までには事業譲渡の内容(=何をいくらで売るか)を確定しなければなりません。

そして,事業譲渡契約締結に至るまでには,事業の評価(デューデリジェンス),契約内容の確定交渉などある程度時間を要する手続が必要です。
そうすると10月くらいまでには,ある程度具体的に絞り込みたいところではないでしょうか。
いずれにせよ11月にはスポンサーが決まっていなければならないのは間違いありません。


想像2 10億のDIPファイナンスの意味

本件のように,民事再生手続中に受ける融資のことをDIPファイナンスといいます。
民事再生は広義の倒産処理手続きですので,普通に考えれば,どこも融資してくれません。
そこで,再生手続に縛られることなく,再生債務者財産から優先的に回収できるというインセンティブの下で融資されるのがDIPファイナンスということになります。

今回,10億の枠で融資が受けられるということになっています。
これはすなわち,融資側からすると10億までは回収の見込みあるということだと思います。
同社の直近の貸借対照表を見ると,無担保で10億回収可能な資産は見当たりませんので,この回収見込みを裏付ける資産は,譲渡予定の事業と考えてよいように思います。
つまり,事業譲渡対価が10億を超える(債権者への弁済原資も考慮すればもっと高額でないとペイできません)という理解ができるのではないでしょうか(繰り返しになりますが,全くの想像です)。

また,このタイミングでの融資枠設定がなされた理由としては,一つには1次選考終了で事業譲渡の成立の見込みが具体化してきたこと(=金融機関としてもとりはぐれない見込みが出てきた),もう一つには資金需要の発生があるのではないかと思われます。

後者について少し補足します。

一般的に民事再生では申立から数カ月の資金繰りがヤマです。
この見込みがないために破産を選択せざるを得なかった企業は私が扱った案件でも数多くありました。

翻ってインデックスを見ると,どうやら申立当初の資金繰りは乗り切ったようです。
これも憶測ですが,再生申立がなされた6月下旬というのは,同社にとってキャッシュが潤沢になる絶好の時期だったと思います。
同社がゲームソフトの開発・販売をする「アトラス」という事業部門を持っていたことは前回の記事で書きました。
このアトラスは,パッケージソフトの開発がメイン事業です。
パッケージソフトは,オンラインゲームのような継続して遊んでもらって継続的に売り上げが上がる「農耕型」ではなく,発売直後に売上の大半が集中する「狩猟型」の商品です。
アトラスは,ウェブサイトによれば,平成24年から平成25年8月までの間に8本のパッケージソフトを発売していますが,その発売スケジュールをまとめると以下のとおりです(なお,タイトルは独断で略称を用いました)。

 
   H24/5/17 P2
   H24/6/14 P4G
 H24/7/5 世界樹の迷宮4
 H24/7/26 P4U
 H24/8/30 ソウルハッカーズ

 H25/5/23 真女神転生4
 H25/6/27 新世界樹の迷宮
 H25/7/25 ドラゴンズクラウン

こうして見ると以下のことがわかります。

・アトラスブランドによるゲーム発売(=売り上げ)は,5〜8月に集中している。

・民事再生申立がなされたH25/6/27は,真女神転生4と新世界樹の迷宮という二つのタイトルが発売された直後(後者に至っては当日)であり,翌月にはさらに1本の発売を控えていた。したがって,ここからしばらくが同社にとって平成25年でもっともキャッシュが潤沢な時期だった。

・逆に秋以降は新作の発売予定がないので,まとまったパッケージソフトの売り上げは見込めない。資金繰りが厳しくなることが想定される。

すなわち,5〜7月の潤沢な資金で再生申立コスト(裁判所への予納金・弁護士費用など),事業譲渡コスト(フィナンシャルアドバイザー費用),固定費(従業員給与や非金融債務支払)を捻出していたが,それも再生計画が終わるまでの期間(順調に手続が進んでも来年初頭まではかかります)までは持たない可能性があるので,事業譲渡の見込みを背景にこの段階でDIPファイナンスを受けた,ということになるのでしょう。

こうしてみると,再生申立をするなら5〜6月のタイミングがベストという判断になると思います。
また,事業譲渡の進展などいろいろな要素を有機的に組み合わせて「綱渡り」を成し遂げているあたり,申立サイドもなかなかのプランニングではないかと思います。


長々と書いてしまいました。
こうやっていろいろな事が考えられるのが民事再生スキームの懐の深さであり,案件としての妙味です。
また,倒産処理やむなしの状況でも,「破産で清算して終わり」というだけではなく,「少しでも次へつながる」処理をする,というのが当事務所の基本ポリシーであり,この観点から民事再生スキームに力を入れています。

まったくの第三者でしかありませんが,事業再生のプレイヤーの一人として,インデックス社の民事再生が着実に進捗するよう見守っていきたいと思います。



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