換骨奪胎 〜事実を整理・再構成することの意味

柳田國男氏の「遠野物語」をご存知でしょうか。
言わずと知れた民俗学の古典ですので,お読みになっている方も多いと思います。
私が遠野物語を初めて読んだのは確か中学生の時でした。そのときは,原文と訳文と照らし合わせながら,読んでいった記憶があります。
もともと読書感想文用に買ってきた文庫でした。同書に書かれた遠野の民俗・怪異は,非常に面白かったのですが,感想文となると何を書いていいのかよくわからず,結局別の本で読書感想文を書いたと思います。
しかし,その後も,1〜2年に一度くらいは文庫を開き,繰り返し読んできました。
孫子と並んで昔から読み込んでいる古典のひとつです。

先日,作家の京極夏彦氏がこの遠野物語をベースに再構成・新訳した「遠野物語remix」を読みました。

この本は,エピソードの順序を再構成し,同氏の解釈の下で,そして同氏の文体で現代語化したもので,内容自体が新しいものではありません。
そこにあるのは,読みなれた遠野物語です。
しかしながら,不思議なもので,オリジナルよりも,よりはっきりと遠野の「空気」のようなものを伝えてくる作品になっているように感じました。
原点の写実主義を敢えて捨て,現実ベースゆえの混然とした状態を,一度筆者の思考と感性のフィルタを通して小説的に再構成することで,原著の持っていた魅力をより巧みに表現した,ということもできるかもしれません。
言い換えれば,京極氏が作品を読み解き,自ら言葉を選んで再構成したことにより,表現されるものは同じでも伝わるものが違う,独自の存在感を放つに至っているのだと思います。


このように,事実を再構成し,伝えたいことを伝えるという点では,我々弁護士の行う作業も共通するところがあります。

法律論のフィルターを通して,混然となった事実から,法的に意味のある事象を抽出し,論証したい方向性に沿って再構成するのは,まさにこの本で京極氏が成し遂げたことと同じベクトルを持つものです。

私の書く文章も,京極夏彦氏の文章とまではいかないにせよ,格調と存在感のある文章になるよう,努力していきたいと思います。


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