アトラスの明日が見えた 〜インデックス社の民事再生その3

現在民事再生中のインデックス社(以下「旧I社」といいます)のアトラス関係の手続がしばらく前にひと段落し,アトラスは新しい事業へと動き始めました。
すでにアトラスは新会社の下で数本の新作を発表しており,新会社の代表者インタビューが雑誌に掲載されるなどしています。
このブログでも,これまで2回にわたり,旧I社とアトラスの動向について予測をしてきました。
今回は,アトラスに関する事業譲渡について,譲渡後に気になっていた点の検討・分析を少ししてみたいと思います。

前提として,アトラスに関する処理を確認しておくと,

ゝI社が,セガドリーム社にアトラスに関する事業を事業譲渡
▲札ドリーム社は,アトラス譲受後,商号を株式会社インデックス(以下「新I社」)に商号変更
5I社は,民事再生手続を続行(おそらくは配当後は清算するのではないかと思われる)

という状況になっています。

さて,本件のようにM&Aで事業を取得する場合,法的にはいろいろなやり方があります。
民事再生手続における取得に絞っても,

1 事業譲渡による取得
2 100%減資&増資による子会社としての取得
3 会社分割による取得
4 吸収合併による取得

などがあります。

今回は,1のスキームでの取得がなされたわけですが,このスキームのメリットの一つは,「資産・契約関係の個別譲受なので,他の手続と違い,不要な負担(負債,人員,設備など)を引き継がずに済む」という点にあります。
他の3つのスキームは,程度こそ違えど,対象会社自体を取得することになるのに対し,この事業譲渡スキームでは,対象「事業」のみを取得することになり,正にそれがメリットということになります。

他方で,デメリットは,「手続が面倒(個別に契約で譲り受けるため,漏れをなくすために個々の特定が必要)」という点です。

もっとも,通常再生において事業譲渡スキームが取られることはよくあることであり,それ自体は気になることではありません。
本件で少し気になるのは,前述の△療世任后
なぜ気になるのかを理解していただくためには,もう少し踏み込んだ説明が必要です。

前述のとおり,事業譲渡の場合,対象会社を切り離す,という点が重要なので,「商号」(=会社の名称です。本件だと「株式会社インデックス」です。)」の引継ぎなどはあまりなされないように思われます。
その理由としては2つが考えられます。

1 商法上,譲受人の商号を引き続き使用する場合には,譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任が生じます(商法17条)。
この点に関しては,責任を負わない旨の登記をすれば,この商号続用者責任を回避することはできます(同条2項)が,逆に言えばそのような一手間加えてまで続用するということになります。

2 商号続用の実益があまりない。
特に倒産処理の一環での事業譲渡の場合,当該会社は倒産した企業であり,その商号には事業にとって重要な「信用」はありません。
むしろ,まだ使える事業を新しい会社の下でリスタートさせる方が,かえってビジネス上は有利に働くのが通常です。
また,商号も含めて事業としての魅力があるなら,他のスキーム(減資・増資による子会社化など)の方がコスト面など考えればより有利とさえ言え,あえて事業譲渡スキームを選択する必要が乏しいと言えます。

このような理由から,通常は商号の続用はされないわけです。
では,なぜ本件では,事業譲渡+商号続用というスキームが取られたのでしょうか?

考えてみると,アトラス事業では,既に株式会社インデックス名でさまざまなコンテンツを提供していました。また,直近でもアトラスのゲームを原作とした劇場用アニメーションが公開を予定していたなど,多様な関与がありました。
それらについて,例えばセガドリーム名に変えていくというのは,あまり実益のある作業ではないうえ,コスト・手間の面でも大きな問題が生じます。他方で,インデックス名を維持すれば,これらの問題・コストは発生しません。
また,消費者の立場からしても,アトラスがインデックスという商号で展開を始めたのは比較的近い過去ということもあり,インデックスという名称よりもアトラスという名称のネームバリューが圧倒的に強く(少なくとも私はそうです),インデックスの名称を続用してもマイナスイメージはそれほど大きくないと思われます。
さらに言えば,セガとアトラスのブランドを明確に分けるというより実質的な意味合いもあると思います。セガ社のアトラス,というのは,昔を知るものからすれば,どうしても違和感が残ります。
これらの点を考慮すると,インデックスの名称を続用するインセンティブがあるということになります。

他方で,事業譲渡以外のスキームを選択するのは,旧I社について流れていた粉飾決算などの情報を考慮するとリスキーな投資という外ありません。
あえて事業譲渡スキームを選択する強いインセンティブがあります。
なお,新I社の商業登記を確認すると,商法17条2項の商号続用責任を負わない旨の登記がきちんとなされていました。


というような事情を踏まえ,本件については事業譲渡+商号続用という形になったのではないか,というのが私の分析です。
相変わらずの独断であり,かつ全くの私的見解であって,このような場で論じるほどのものでもありません。
しかし,企業の再生の現場には,ビジネスと法の知見をフル活用した知的好奇心を刺激するこのような事象がたくさんあります。
だからこそ,島根の片隅であっても企業の再生案件を続けるやりがいがある,ということを感じていただければと思っています。


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